快速会計は小規模法人向けの会計ソフトですが、ちょっとひと手間かけると、青色申告をする個人事業主さんでも利用することができます。
法人と個人事業主では、勘定科目が違う、期末の振替や繰り越し方法が違う、といった差異があります。
個人事業主向けの会計ソフトでは、12/31や1/1に行うべき振替などを自動的にやって、ユーザーの手間がかからないようにしています。
その「自動的に」の部分を手作業でやって、1月1日付けの仕訳伝票を1枚追加することで、快速会計をなんら問題なく使うことができます。
【前準備:勘定科目マスタのフォームでの作業】
1.勘定科目を追加する。
流動資産のグループに「185:事業主貸」を追加する。
流動負債のグループに「445:事業主借」を追加する。
2.勘定科目名を変更する。
「550:資本金」を「550:元入金」に変更する。
「590:繰越利益剰余金」は、前年の「青色申告特別控除前の所得」であると理解してください。コードも勘定科目名もそのまま使ってください。
「550:元入金」と「590:繰越利益剰余金」は、年に1回、1月1日にしか使わない勘定科目です。
「185:事業主貸」と「445:事業主借」は、よく使いますが。
【1月1日付けの仕訳伝票で何をやるのか?その目的は?】
「資本金(元入金)」と「繰越利益剰余金」の扱いが、法人と個人事業主ではまったく違います。
法人の「資本金」は登記を変更しない限り、法人設立時の資本金が同額のまま変わりませんが、個人事業主の「元入金」は年度のスタートで毎年変わり、増えたり減ったりして、マイナスになることもあります。
法人の「繰越利益剰余金」は、法人設立以来の黒字や赤字が自動的にプラスマイナスされて、貸借対照表の「資本の部」に表示されますが、個人事業主では、「繰越利益剰余金」を年度のスタートでいったん「0」にします。
イメージとしては、「事業主貸」と「事業主借」を相殺し、前年の「青色申告特別控除前の所得」=「繰越利益剰余金」を「0」にして、借方・貸方の合計を一致させるために「元入金」に差額を押しつける、そんな感じです。(^_^;)
では、仕訳例を書いてみましょう。
【パターン1】
普通な感じ。前年の「事業主貸」と「事業主借」はほぼ同額で、「青色申告特別控除前の所得」(法人では、純利益金額といいます)が300万円の黒字だったときの翌年1月1日の仕訳。
事業主借 1,200,000 / 事業主貸 1,000,000
繰越利益剰余金 3,000,000 / 元入金 3,200,000
【パターン2】
かなり厳しかった。前年の「事業主借」が多かった、つまり、事業主が資金をつぎ込んだ。所得は150万円の赤字だったときの翌年1月1日の仕訳。
事業主借 2,200,000 / 事業主貸 850,000
元入金 150,000 / 繰越利益剰余金 1,500,000
【パターン3】
かなり順調だったが、事業主の飲む・打つ・買うがスケールアップして、商売のお金を持ち出した。お金は無いのに所得は500万円もの黒字が出たときの翌年1月1日の仕訳。
事業主借 50,000 / 事業主貸 6,000,000
繰越利益剰余金 5,000,000
元入金 950,000
見てわかるように、「事業主借」が借方、「事業主貸」が貸方はいつも同じですが、「繰越利益剰余金」と「元入金」は借方だったり貸方だったり。
「元入金」は差を埋めるために、最後に、借方・貸方のどちらかに置けば良いのです。
ということは、キーポイントは「繰越利益剰余金」ですね。
「繰越利益剰余金」は貸方に残高がある勘定科目ですから、前年からプラス(黒字)で繰り越されてきた場合は、同額を借方に持って行けば、プラスマイナス「0」になります。逆に、前年からマイナス(赤字)で繰り越されてきた場合は、マイナスを取り除いた金額を貸方に持って行けば、プラスマイナス「0」にできます。
いずれも、とりあえず仕訳登録をして、総勘定元帳を確認してください。
「590:繰越利益剰余金」の総勘定元帳の残高が「0」になっていれば、仕訳が正しかったと。(^^)/
残高が2倍に増えていたら、借方・貸方が逆だったと気づきますからね。(^_^;)
そのときは、総勘定元帳の明細行のレコードセレクタ(行の左端の長方形)をダブルクリックしてください。修正等専用伝票が開きますから、「修正モード」にして修正してください。
1~2度、修正するかも知れませんが、どういう結果になれば、「うまく、できたぁ~!」と言えるのかを書きます。
・1月1日の仕訳をした結果、「事業主借」の残高がゼロになった。
・1月1日の仕訳をした結果、「事業主貸」の残高がゼロになった。
・1月1日の仕訳をした結果、「繰越利益剰余金」の残高がゼロになった。
・1月1日の仕訳をした結果、「元入金」が増えた、または、減った。
国税庁のHPなどを利用して、青色決算書の貸借対照表を作成するときは、「事業主貸」「事業主借」「青色申告特別控除前の所得」の期首の残高を入力する枠がありません。値がゼロに決まっているからかも知れません。注意するのは「元入金」で、こちらは期首と期末の金額を入れることになっていますが、期末の金額と同額を期首にも入れて下さい。これによって、貸借がうまくバランスする(一致する)ことになっています。
※「元入金」はマイナスになることもあります。赤字が続いたり、「事業主貸」が大きいときは、「元入金」がマイナスになります。こういう決算もありえますし、所得税法に罰則規定はありませんが、経営管理能力を疑われます。「元入金」のマイナスを解消するには、事業の利益を増やすか、個人の資金をつぎこんで「事業主借」を増やす必要があります。
1月1日のこの振替の仕訳が完了すれば、あとは、期中の会計処理は、法人も個人事業主もだいたい同じです。事業とプライベートを分けるときに使う勘定科目が違うだけです。
法人:社長借入金 = 個人事業主:事業主借
法人:社長への貸付金または仮払金など = 個人事業主:事業主貸
ちなみに、「事業主借」として借りたお金を個人に(事業者じゃなく生活者としての個人に)返済したときの仕訳は、事業主貸 ○○○○/現金 ○○○○ で、事業主借 ○○○○/現金 ○○○○ ではないのです。
法人の経理とは違います。
個人事業主の経理では、「事業主借」「事業主貸」は、年間を通じて残高が増える一方で、減ることはありません。
唯一減る(消える)タイミングは、上記の1月1日の仕訳をやったときです。
事業者から生活者にお金を移したときは、その理由に関係なく、お金が移動した方向性だけを見て、事業主貸 ○○○○/現金 ○○○○ とするのです。なんだか、しっくりこない部分もありますが、そういうルールになっています。
その点、法人の場合は、法人と代表者が明確に別人格ですから、迷うことがないですね。